2014年07月15日

A型肝炎

夏休み前の時期は、海外にインターンシップや、留学に行く学生さんが、ワクチン接種の相談にいらっしゃいます。

短期の滞在であっても、是非受けていただきたいのが、A型肝炎ワクチンです。

A型肝炎は、ウイルスで汚染された水や食べ物を介して感染します。
一部の国を除いて、世界中が流行地帯(下の地図でオレンジ色に着色された地帯)です。
Global_HepA_ITHRiskMap.png

しかし、そういう流行国に行っても、A型肝炎にかかったことのある人はあまりいません!何故なら、赤ちゃんのうちに感染すると、無症状で、免疫だけを獲得(不顕性感染)するからです。

成長してから感染すると、症状が出ます。
・下痢
・発熱
・倦怠感
・黄疸(体が黄色くなる)

潜伏期間(ウイルスに感染してから症状が出るまでの期間)が26日ほどもあるため、短期の渡航ですと、日本に帰ってきて、しばらくしてから症状に気づくことになります。

治療法は「安静」と「対症療法」のみです。
A型肝炎ウイルスをやっつける薬はありませんので、治るのを待つしかありません。

死亡率は 0.2% とされますが、高齢者や、肝臓に病気(脂肪肝やB型肝炎、C型肝炎など)のある方は、リスクが増します。



A型肝炎ワクチンを強くお勧めする理由は

1)免疫がつきやすく、出発直前の接種でも有効
2)免疫を獲得する率が高い(ほぼ100%)

A型肝炎は潜伏期間が長いため、10日程度の旅行であれば、帰国直後に接種しても発病を阻止できる可能性があります。これを暴露後予防(Post-exposure prophylaxis)といい、CDC ガイドラインにも有効である旨が記載されています。

Postexposure Prophylaxis for Hepatitis A

What are the current CDC guidelines for postexposure protection against Hepatitis A?

Until recently, an injection of immune globulin (IG) was the only recommended way to protect people after they have been exposed to Hepatitis A virus. In June 2007, U.S. guidelines were revised to allow for Hepatitis A vaccine to be used after exposure to prevent infection in healthy persons aged 1–40 years.

Persons who have recently been exposed to HAV and who have not been vaccinated previously should be administered a single dose of single-antigen Hepatitis A vaccine or IG (0.02 mL/kg) as soon as possible, within 2 weeks after exposure. The guidelines vary by age and health status:


A型肝炎ワクチンの種類

国内で販売されているA型肝炎ワクチンはエイムゲンのみです。
ただし、生産量が少ないため、供給が安定せず、しばしば欠品することがあります。

当院では、エイムゲン、Havrix(ハブリクス)を常備しています。
Havrix は、1回の接種で有効であること、海外赴任者では、現地で2回目を接種する場合、Havrix でないと同じ銘柄のワクチンが打てないため、当院では Havrix を第一選択にして、お勧めしています。

日本のエイムゲンと、Havrix や Vaqta などの海外製のワクチンは、互換性が確認されていませんから、最初は Havrix で、2回目をエイムゲン、というワケにはいきません。Vaqta と Havrix は互換性がありますので、海外で Vaqta を接種して来られた方は、2回目を Havrix で接種いただけます。

B型肝炎ワクチンも一緒に受ける方には、Twinrix をお勧めしています。A型肝炎ワクチンの成分は Havrix と同じですから、やはり互換性があります。

Travel Health のマニュアルのひとつ、CDC の YELLOW BOOK 2014 より。
米国内で市販されているA型肝炎ワクチンの種類。
hav.png


これが Havrix です。
havrix.jpg
海外のワクチンは、打ち間違えや、偽物を打たれることを防ぐために、シリンジに入ってることが多いです。ワクチンを調製する際の汚染も防ぐことができますから、合理的ですよね。


Havrix の添付文書です。
havrixi.jpg
こちらから PDF が閲覧可能です。

海外渡航が楽しい経験や思い出になるよう、感染症予防の対策をしっかりしてから出掛けましょう。
posted by 久住英二 at 14:45| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ワクチンの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月13日

君に友だちはいらない !?


エンジェル投資家かつ京都大学客員准教授の瀧本哲史さんをご存じの方は多いかと思います。

インパクトのある表紙の著書、すでにお読みの方も多いと思います。


この本の中で、東中野クリニック院長の濱木珠恵医師が紹介されています。
東北の震災時、血液透析をしている患者さんを急遽搬送しなければならない事態が生じました。

p.163 東日本大震災で生命の危機584人の透析患者を緊急搬送せよ をお読み下さい。

腎臓の機能が低下している人は、週に3回程度の血液透析、もしくは毎日の腹膜透析をおこない、老廃物を体外に排出しなければ生きていけません。血液中のカリウムの値が上がれば心停止しますし、水分がたまれば心不全を起こして肺がむくみ、息ができなくなります。

透析には大量の水を必要とするため、ライフラインの水と電気は、まさに血液透析を受けている方の生命線なのです。
それが広範囲でとまってしまったのだから大変です。

患者を搬送するためのバスは、県庁や公的機関のどこに頼んでも動かない。
刻一刻とタイムリミットが迫る。

濱木医師は当時、都立墨東病院に勤めていました。
この緊急事態を知って、「古文書研究同好会」の友人が旅行会社に勤めているのを思い出し、連絡をとりました。
その友人がバス会社に連絡してくれ、すぐに30台のバスが確保できたそうです。

濱木医師のネットワークが、透析患者さんを緊急事態から救う一助となりました。
とても素晴らしいコトだと思います。

こんなに機転の利くメンバーがチームに居てくれることを感謝し、とても誇りに思っています。
posted by 久住英二 at 09:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月12日

言葉の壁をなくしたい


ナビタスクリニックには、ときどき日本語を話さない方が受診されます。
中国、韓国、インド、フィリピン、アメリカ合衆国、ネーデルランド・・・

体の具合が悪くて医療機関にいらっしゃっているのに、言葉が通じないって、さぞかし不安だろうな、と思います。

英語を話される方には、こちらも片言の英語で説明しているけれど、通じているのか不安になります。
日本語も英語も全く話さない方だと、さらに・・・。

せめて、電話越しにでも通訳してくれる人がいると良いな、と思っていました。

とくに、川崎クリニックには、インド人とフィリピン人の方が多く受診され、多くの方は英語を話されますが、中にはヒンディー語やタガログ語しか話さない方もいらっしゃいます。また、日常会話は大丈夫でも、病名や薬のことになると、よくわからない、というような方が結構いらっしゃいます。

そこで、渋谷健司教授率いるJIGHに相談しました。JIGHは、パキスタンやナイジェリアのポリオ排除の活動に精力的に取り組んでいるシンクタンクです。
JIGH.png


そしたら、すぐに対応してくださいました。
で、できたのが medi-phone というサービス。

mediphone.png

診察室の電話から電話して、希望の言語を選択するだけ。
あとは、スピーカーを ON にしたら、電話の向こうにいる通訳者が通訳してくれます。

このサービスが拡がって、日本に住んで、日本を愛してくれている外国人のみんなが、安心して医療が受けられるようになると良いな、と願っています。

これも、医療の現場で気づいた問題点と、そのイチ解決法です。
posted by 久住英二 at 22:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療の周辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする