2016年07月11日

モーニングアフターピル

ナビタスクリニック新宿を開院してから気づいたことがあります。
モーニングアフターピルの処方を希望して受診される方が多いのです。新宿という立地の影響でしょうか?

ご存じない方のために解説致しますと、モーニングアフターピルとは、緊急避妊法のひとつです。
Emergency contraception 緊急避妊
Postcoital contraception 性交後避妊
The morning-after pill 翌朝のピル
など、いろいろな呼び方があります。

コンドームは挿入の最初から最後まで用いるべきなのですが、途中でつけた、外れた、破れた、もしくはコンドームをつけずに外に出した、などの場合は妊娠する可能性があります。

日本で用いられるのはノルレボと、プラノバールです。
プラノバールは、そもそもが緊急避妊用の薬ではありませんが、安価であることとプライバシー(ノルレボと異なり、過多月経などに用いられる薬であるため、緊急避妊が目的であると知られにくい)の点で、多く用いられています。

薬の適用という点ではノルレボを用いるべきですが、高価(価値の捉え方は様々とは思いますが)であり、プラノバールを選択される方が多いです。ノルレボの価格はプラノバールの 156倍ですが、それに見合う効果の差があるのでしょうか?
外国人を対象に実施した無作為化二重盲検比較試験(処方する医師も、服用する本人も、どちらの薬を服用しているか分からないように計画された試験)が実施され、結果が Lancet という権威ある医学雑誌に報告されています。

Lancet. 1998;352(9126):428.

BACKGROUND: A previous randomised study suggested that the progestagen, levonorgestrel, given alone in two separate doses each of 0.75 mg caused nausea and vomiting in fewer women and might be more effective than the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception, although the difference was not significant. We compared these two regimens when started within 72 h of unprotected coitus.

METHODS: We enrolled in the double-blind, randomised trial 1998 women at 21 centres worldwide. Women with regular menses, not using hormonal contraception, and requesting emergency contraception after one unprotected coitus, received levonorgestrel (0.75 mg, repeated 12 h later) or the Yuzpe regimen (ethinyloestradiol 100 microg plus levonorgestrel 0.5 mg, repeated 12 h later).

FINDINGS: Outcome was unknown for 43 women (25 assigned levonorgestrel, 18 assigned Yuzpe regimen). Among the remaining 1955 women, the crude pregnancy rate was 1.1% (11/976) in the levonorgestrel group compared with 3.2% (31/979) in the Yuzpe regimen group. The crude relative risk of pregnancy for levonorgestrel compared with the Yuzpe regimen was 0.36 (95% CI 0.18-0.70). The proportion of pregnancies prevented (compared with the expected number without treatment) was 85% (74-93) with the levonorgestrel regimen and 57% (39-71) with the Yuzpe regimen. Nausea (23.1 vs 50.5%) and vomiting (5.6 vs 18.8%) were significantly less frequent with the levonorgestrel regimen than with the Yuzpe regimen (p<0.01). The efficacy of both treatments declined with increasing time since unprotected coitus (p=0.01).

INTERPRETATION: The levonorgestrel regimen was better tolerated and more effective than the current standard in hormonal emergency contraception. With either regimen, the earlier the treatment is given, the more effective it seems to be.

ノルレボのインタビューフォームに結果と安全性が表にまとめられていたので引用します。

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Yuzpe 法=プラノバール錠を2錠ずつ12時間間隔で服用する方法は、LNG=ノルレボと比較して妊娠する率が 2.9倍でした。もちろん、性交渉すれば常に妊娠するわけではなく、月経周期などから計算して、緊急避妊をしなければ成立したであろう妊娠を阻止できた率は Yuzpe 法 57%、LNG法 85% で、ノルレボに軍配があがります。

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服用後の症状は、Yuzpe 法の方が吐き気、目まい、だるさなど、症状が出現する率が高いという結果です。

これらの結果からは、効果と安全性の点で、ノルレボがお勧め
ノルレボが高いと言っても、薬代は1万円程度です。

日本では、毎年20万件以上の人工妊娠中絶が実施されています。表に出て、報告されている件数だけで。20歳未満に限ると、2万件程度です。
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望まない妊娠、人工妊娠中絶というコストを考えれば、ノルレボのコストは十分見合うのではないでしょうか?


posted by 久住英二 at 15:36| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 女性内科 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月08日

子宮頸がんなど HPV によって起きるがんは多くが予防可能

米国 CDC が発行する MMWR = Morbidity and Mortality Weekly Report は、米国でのインフルエンザなど感染症や、がんなど疾病の統計データが掲載されています。私の周りの内科医では、定期的に目を通している人が多いです。

July 8 号にて、Human Papillomavirus–Associated Cancers − United States, 2008–2012 という記事が掲載されています。2008〜2012年の間にアメリカ合衆国で発生した HPV との関係が濃厚ながんの発生数と、そのうちどの程度が HPV ワクチンを接種していれば予防されたか、推定値が報告されています。

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子宮頸がん Cervical carcinoma は 30-40代女性で最多ですね。腟 Vaginal SCC や外陰がん Vulvar SCC が年齢につれ増加するのと対照的です。やはりマザーキラーの異名は伊達ではありません


Summary = この報告の要点
このトピックについて今まで知られていること

HPV の持続感染が子宮頸がんや、外陰・腟・陰茎・肛門・直腸と咽頭の扁平上皮がんを起こす。それらのがんの多くは、HPV ワクチンによって予防可能である。効果的な子宮頸部スクリーニングにより、前がん病変を発見することができる。

このレポートによって加わった知見

2008-2012年の間に、平均すると年間 38,793人(10万人あたり 11.7人)が HPV 関連がんと診断された。うち 23,000人(13.5人/10万人)が女性で、15,793人(9.7人/10万人)が男性だった。それらのがんのうち、30,700人(79%)が HPV によるものと推定され、うち 28,500人は、9価 HPV ワクチンで予防可能な HPV 血清型が原因と推定される。

公衆衛生を向上させるには何をすれば良いか

全員にワクチン接種を提供することが、これらの HPV 関連がんを予防することに繋がる。HPV ワクチン接種率の増加や、子宮頸がん検診方法の変更がこれらのがんの発生動向に与える影響をモニターするため、より高品質の住民レジストリを用いて、HPV 関連がんのサーベイランスを続けることが必要である。


がんのうち、HPV 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58 = 9価 HPV ワクチンで予防される HPV 関連がんの人数と百分率が一番右のカラムに書かれています。子宮頸がん Cervical では 80.9% です。これは、その国によって異なりますから、日本でもこのような統計を継続的におこなう必要があります。

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世界は、すでに 2価、4価 HPV ワクチンでなく、9価 HPV ワクチンがスタンダードになってきています。日本では心因反応やヒステリー反応を HPV ワクチンのせいだ、とする少数意見をマスメディアが大きく報道し、あたかも HPV ワクチンが危険であるかのような空気が生じ、合理的な議論がなされず、停滞しています。

いま HPV ワクチン接種機会を逃した 13-16歳の女性達が、2030年ころに子宮頸がんを発症します。その頃になって後悔しても遅いのですが、合理的な判断をしないのも、人間の特性でもあるので、仕方ないのでしょうか。

posted by 久住英二 at 16:22| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 感染症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月27日

医療遠隔通訳システムが大活躍

新宿にナビタスクリニックがオープンして、もうすぐ丸三ヶ月が経ちます。少しずつクリニックを利用される方が増えてきました。立川や川崎とは異なる医療ニーズが多いように感じています。

日本語を話さない方の受診が多いです。
新宿駅に立地し、かつ巨大バスターミナルであるバスタ新宿最寄りですから当然なのでしょうけれど。今のところ週に数名ですが、おもに近隣のホテルに宿泊されている中国語圏からの渡航者が、ホテルにクリニックを教えてもらって来院されます。

主に家族連れで、お子さんの体調不良での受診が多く、旅行中なので「あすディズニーランドに行って大丈夫か?」など具体的な質問をいただくことが多いです。

風邪と診断し、説明する場合。
風邪はウイルス感染症ですから、特効薬はありません。安静が一番です。さらに、旅行で疲れているでしょうから、普段より治りは悪いと思います。でも、折角の旅行ですから、頭ごなしに休みなさい、とは申しません。今日はホテルで休んで、明日の朝の様子で決めて下さい。だるい、食欲がない様であれば、明日も休んで回復を図ることをお勧めします」などと説明します。

翻訳をグーグルに頼んでみると
由于感冒是病毒感染,没有银弹。剩下的就是最好的。此外,你就行更累,愈合比平常我觉得不好。但是,因为这是比较麻烦的旅行,请大家在Atamagonashi ,我也没有。今天是休息的酒店,它应该在明天早上的状态来决定。无精打采,如果这样的没有食欲,所以建议以实现恢复静止明天
となります。

これをもう一回グーグル先生に日本語にしてもらうと
風邪はウイルス感染であるので、特効薬はありません。残りは最高です。また、あなたは私が悪い感じ癒すためにいつもより疲れて行います。これは旅行にあまりにも面倒なのでしかし、 Atamagonashiで、私はしませんでしたしてください。今日は、ホテルの残りの部分で、それが決定する状態明日の朝にする必要があります。そのような食欲がない場合は物憂げな、ために、明日まだ回復を達成するためにすることをお勧めします
となります。

グーグル先生だけに頼むのは不安です。時には、患者さんが片言の日本語を話す通訳者さんを連れてこられることがありますが、どのように通訳されているのかが不明で、甚だ不安です。

当院では医療遠隔通訳サービス『メディフォン』を採用しています。8カ国語(英語・中国語・韓国語・ベトナム語・ポルトガル語・スペイン語・ヒンディー語・ロシア語)に対応しており、通訳の品質管理も行われています。

細かいところまで質問されても、しっかり答えて差し上げられるので、皆さん納得して診察を終えることができます。

旅行者の方が日本に来てから契約できる旅行保険がもうすぐ発売されるそうです。この保険を契約すると、メディフォンによる医療通訳サービスを利用できます
もしご友人が日本を訪問される場合は、この旅行保険をお勧めいただくと安心ですね。
posted by 久住英二 at 13:35| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療の周辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする